承認申請書とSTEDの書き方|医療機器の現役実務者が作成のコツを解説

「承認申請書の様式は手に入れた。STEDのひな形もある。

でも、どこから手を付ければいいのか分からない」——初めて申請を担当する方が最初にぶつかる壁です。

STED(Summary Technical Documentation=添付資料概要)とは、承認申請書に添付する資料を、国際的に整合された章立てで整理した文書のことです。

承認申請の書類仕事は、この「申請書」と「STED」の2つをどう作り込むかで決まります。

この記事では、医療機器の承認申請書とSTED(添付資料の様式)について、通知の要約ではなく「実際に書くときの手順とコツ」を、現役の承認申請担当者の視点で解説します。

申請制度の全体像(申請区分・審査の流れ・標準的な期間)は、親記事の「医療機器の承認申請 完全ガイド」を先にお読みください。

目次

1. 承認申請書とSTEDの関係をまず整理する

承認申請で提出する書類は、大きく「承認申請書(本体)」と「添付資料(STED形式で整理した資料一式)」の2つに分かれます。

申請書は承認事項そのもの(=承認後に変更手続きの対象になる部分)、STEDは審査員に品質・有効性・安全性を説明するための資料、という役割の違いがあります。

書類役割承認後の位置づけ
承認申請書何を・どういう仕様で製造販売するかを特定する記載内容=承認事項。変更には一変承認申請または軽微変更届が必要
添付資料(STED)申請品目の品質・有効性・安全性の根拠を体系的に説明審査の資料。承認事項ではないが、試験方法の妥当性などが審査で見られる
承認申請書とSTEDの二層構造:申請書は記載内容が承認事項そのもの(変更には一変承認申請・軽微変更届が必要)、STEDは審査を支える根拠資料(9項目の章立て)。2つの記載は一言一句レベルで整合させる

実務で重要な原則は「申請書とSTEDの記載は一言一句レベルで整合させる」ことです。

使用目的の表現が申請書とSTEDで微妙に違う、規格値が試験成績書と食い違う——

このような不整合は、それだけで照会事項の対象になります。

2. 承認申請書の書き方:記載欄ごとに審査で見られるポイント

承認申請書の主な記載欄と、書くときの実務的な注意点を整理します。

記載欄書くときのポイント
類別・一般的名称JMDNの選定が出発点。先行品を確認する
販売名誇大な印象を与える名称は避ける。社内の商標・ブランド戦略と早めにすり合わせる
使用目的又は効果審査で最も重要な欄のひとつ。臨床的な位置づけと過不足なく一致させる。広告表現の限界もここで決まる
形状、構造及び原理図を活用。バリエーション(サイズ違い等)の書き方は先行品の記載ぶりを参考に
原材料人体接触部位の材料は特に正確に。生物学的安全性評価との対応を取る
性能及び安全性に関する規格「規格値の設定根拠」を必ず説明できるようにしておく。根拠のない規格は照会の的
使用方法添付文書・取扱説明書と整合させる
製造方法・製造所登録製造所と役割(設計・組立・滅菌・保管)を正しく対応させる。QMS適合性調査の対象範囲もここで決まる

3. STEDとは?章立てと「書く順番」のコツ

STED(Summary Technical Documentation)は、添付資料を国際的に整合された章立てで整理する様式です。

日本では通知に基づき、おおむね次のような構成で作成します。

  • 品目の総括(品目の概要、開発の経緯、類似医療機器との比較、外国における使用状況)
  • 基本要件基準への適合性(チェックリスト形式で宣言し、根拠資料を対応づける)
  • 機器に関する情報(申請書を補足する仕様・作用原理などの情報)
  • 設計検証及び妥当性確認文書の概要(性能試験・生物学的安全性・電気安全/EMC・滅菌・安定性などの要約)
  • 注意事項等情報を記載した文書(案)※旧「添付文書(案)」。添付文書の電子化に伴う名称
  • リスクマネジメント(JIS T 14971に基づく実施の要約)
  • 製造に関する情報
  • 臨床試験の試験成績等(臨床ありの場合)
  • 製造販売後調査等の計画(該当する場合)

※この章立ては、令和8年3月31日付け改正(医薬機審発0331第7号)後のもので、2026年(令和8年)5月1日以降の申請に適用されています。

書く順番のコツは「STEDの頭から書かない」ことです。具体的な進め方は、次の章の「作成手順7ステップ」で解説します。

実務のポイント:STEDの中で特に丁寧な説明が必要なのは、次の3つの項目です。

  • 1.2項 開発の経緯
  • 1.3項 類似医療機器との比較
  • 4項 設計検証及び妥当性確認文書の概要

説明が不十分なときに照会が来るのも、この部分が多くなります。

4項で事実ベースのデータをまとめつつ、1.2項・1.3項を充実させて記載するのがおすすめです。

4. 申請書・STEDの作成手順7ステップ(現役実務者の進め方)

申請書・STEDの作成手順は、以下のとおりです。

申請書・STEDの作成手順7ステップ:JMDN・申請区分・先行品の確定→先行品の承認書・添付文書の読み込み→申請書の骨格ドラフト→STEDをデータがある章から書く→STEDのデータをもとに申請書を仕上げる→整合性チェック→社内レビューして申請

実務のポイント:規格値が先行品と異なる場合、外れた範囲の有効性・安全性については厳しく問われることが多いです。事前にSTEDで説明しておくと、照会を減らすことができます。

5. 申請前セルフチェックリスト

申請前には、以下のセルフチェックリストで確認してください。

申請前セルフチェックリスト
  • 使用目的の表現は申請書・STED・添付文書案の3か所で一致しているか。
  • すべての規格値に設定根拠を説明しているか。
  • 試験検体の妥当性は、説明しているか。
  • 試験成績書の数値・単位と申請書規格欄の転記ミスはないか。
  • 製造所の登録番号・役割は最新か(滅菌委託先の変更などが反映されているか)。
  • 基本要件チェックリストの「適用外」項目に理由が書けているか。
  • 信頼性調査・QMS適合性調査への備え(資料の保管場所・版管理)は整っているか。

よくある質問(FAQ)

先行品の申請書はどこで読めますか?

申請書・承認書そのものは公表されていません。先行品の承認書を入手するには、情報公開請求(行政文書の開示請求)を利用します。一方、審査報告書(新医療機器・改良医療機器(臨床あり)が中心)と添付文書はPMDAのウェブサイトで公表されており、審査の論点を知る教材になります。

STEDの様式(テンプレート)はどこで入手できますか?

決まった配布テンプレートはありません。通知「医療機器の製造販売承認申請書添付資料の作成に際し留意すべき事項について」(薬食機参発0120第9号、最終改正:令和8年3月31日付け医薬機審発0331第7号)の別添に章立てと記載要領が示されており、これに沿って自社で作成します。

STEDはどの承認申請でも必要ですか?

承認申請では申請区分を問わず、添付資料をSTEDの章立てで整理します。ただし必要な資料の範囲は区分・品目で異なり、新医療機器・改良医療機器(臨床あり)は通知の別添1、改良医療機器(臨床なし)・後発医療機器は別添2に沿って作成します。

まとめ:STEDは申請書と整合させて、丁寧に書く

STEDは申請書と整合させて、丁寧に書くことが重要です。

  • 承認申請書は「承認事項そのもの」、STEDは「審査を支える根拠資料」。2つの記載を一言一句レベルで整合させる。
  • STEDは特に1.2項 開発の経緯・1.3項 類似医療機器との比較・4項 設計検証の概要は照会が集中しやすいので丁寧に記載するのが照会事項を減らすコツ
  • 先行品の承認書(情報開示請求で入手)と添付文書は最良の教材。作成手順の最初に読み込む

承認申請の全体像(申請区分・審査の流れ・標準処理期間)は、親記事の「医療機器の承認申請 完全ガイド」で解説しています。あわせてご覧ください。

本記事の根拠(出典)

本記事は、次の法令・通知等に基づいて作成しています。

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この記事を書いた人

国内製薬メーカーで研究職として勤務した後、国内医療機器メーカーに転職し、10年以上にわたって医療機器の薬事業務を担当。
クラスIIから高度管理医療機器(クラスIII・IV)まで幅広い製品の承認申請等を経験。現在は、薬事コンサルタントとして活動。
本サイトでは、現場で培った実務経験をもとに、新人〜中堅の薬事担当者向けに発信しています。

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