医療機器の承認申請 完全ガイド|申請区分・必要資料・審査の流れと期間

医療機器を世に出すための3つのルート(届出・認証・承認)のうち、最も重く、最も準備が必要なのが「承認申請」です。

「自社の製品はどの申請区分になる?」「何を準備すればいい?」「承認まで何ヶ月かかる?」

承認申請を初めて担当する方が必ずぶつかる疑問に、現役の承認申請担当者が実務目線で答えます。

この記事では、申請区分の考え方から、必要な資料、審査の流れ、期間の目安まで、承認申請の全体像をゼロから整理します。

なお、届出・認証を含めた3ルート全体の違いは「医療機器の承認・認証・届出の違い」で解説しています。この記事は、そのうち「承認」を深掘りするものです。

目次

1. 医療機器の承認申請とは

1-1. 承認が必要になるのはどんな製品か

医療機器の市場投入ルートは、リスクに応じたクラス分類と認証基準の有無で決まります。

承認申請の対象になるのは、主に次の製品です。

  • クラスII・クラスIIIのうち、認証基準がない(または基準に適合しない)医療機器
  • クラスIVの医療機器

自社製品のクラス分類の調べ方は「医療機器のクラス分類完全ガイド」を、認証と承認の振り分けの考え方は「医療機器の承認・認証・届出の違い」をご覧ください。

1-2. 根拠条文:薬機法第23条の2の5

承認申請の根拠は、薬機法第23条の2の5です。

第1項では、医療機器(一般医療機器・指定高度管理医療機器等を除く)の製造販売をしようとする者は、品目ごとに厚生労働大臣の承認を受けなければならない、と規定されています。

実際の審査はPMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)が行い、その審査結果に基づいて厚生労働大臣が承認します。

2. 最初に決まる「申請区分」——新医療機器・改良医療機器・後発医療機器

承認申請の準備で最初に確認するのが「申請区分」です。

申請区分によって、審査の深さ・必要な添付資料・審査期間が大きく変わるため、実務では最初の分かれ道になります。

2-1. 3つの申請区分の定義

申請区分は、「医療機器の製造販売承認申請について」(平成26年11月20日付け 薬食発1120第5号)で次のように整理されています。

申請区分定義の考え方
新医療機器既に製造販売の承認を受けている医療機器(既承認医療機器)と、構造、使用方法、効果又は性能が明らかに異なる医療機器
改良医療機器新医療機器にも後発医療機器にも該当しない医療機器(既存品と全く同じではないが、明らかに異なるとまではいえないもの)
後発医療機器既承認医療機器と、構造、使用方法、効果及び性能が実質的に同等である医療機器

2-2. 改良医療機器は「臨床あり」「臨床なし」に分かれる

改良医療機器は、承認申請に臨床試験(治験)の試験成績に関する資料が必要かどうかで、さらに「臨床あり」「臨床なし」に分かれます。

臨床データが必要かどうかは、既存品との差分を非臨床試験(性能試験・安全性試験など)だけで評価しきれるかで判断されます。

この判断は難しいことが多く、後述するPMDAの相談制度を活用するのが実務の定石です。

2-3. 実務ポイント:申請区分は最終的には審査の中で確定する

申請区分は申請者が想定して申請しますが、最終的には承認審査の過程で確定されます。

開発の早い段階で区分の見立てを立てたい場合は、PMDAの「医療機器開発前相談」などで、現時点での考え方を確認することができます。

申請区分の判定フロー:既承認品と比較し、構造・使用方法・効果又は性能が明らかに異なれば新医療機器、実質的に同等なら後発医療機器、どちらでもなければ改良医療機器

3. 承認申請に必要な資料

3-1. 承認申請書

承認申請書は、薬機法施行規則に定められた様式に従って作成します。主な記載事項は次のとおりです。

  • 類別・一般的名称・販売名
  • 使用目的又は効果
  • 形状、構造及び原理
  • 原材料
  • 性能及び安全性に関する規格
  • 使用方法
  • 保管方法及び有効期間
  • 製造方法
  • 製造販売する品目の製造所

申請書の記載方法の詳細は、「医療機器の製造販売承認申請書の作成に際し留意すべき事項について」(平成26年11月20日付け 薬食機参発1120第1号)に示されています。

3-2. STED(添付資料の概要)

承認申請書には、製品の品質・有効性・安全性を説明する添付資料を付けます。この添付資料の要約が「STED(Summary of Technical Documentation:添付資料概要)」です。

STEDは国際的な様式(GHTF様式)に沿ったもので、おおむね次のような構成で作成します。

  • 品目の総括(品目の概要、開発の経緯、類似医療機器との比較、外国における使用状況)
  • 基本要件基準への適合性
  • 機器に関する情報
  • 設計検証及び妥当性確認文書の概要(性能試験・安全性試験の要約)
  • 注意事項等情報を記載した文書(案)※旧「添付文書(案)」。添付文書の電子化に伴う名称です
  • リスクマネジメント
  • 製造に関する情報
  • (臨床ありの場合)臨床試験の試験成績等
  • (該当する場合)製造販売後調査等の計画

詳細は「医療機器の製造販売承認申請書の作成に際し留意すべき事項について」(平成26年11月20日付け 薬食機参発1120第1号/令和8年3月31日付け医薬機審発0331第4号により一部改正)に記載されています。

3-3. 基本要件基準チェックリスト

医療機器は、品質・有効性・安全性の基本的な要求事項を定めた「基本要件基準」(平成17年厚生労働省告示第122号)に適合する必要があります。

申請時には、各要求事項にどの資料・規格で適合を示すかを整理した「基本要件基準チェックリスト」を作成します。一般的名称ごとに雛形が公表されているので、それをベースに自社製品に合わせて作り込みます。

3-4. (臨床ありの場合)臨床評価に関する資料

新医療機器や改良医療機器(臨床あり)では、治験の試験成績に関する資料が必要です。治験は「医療機器GCP省令」(平成17年厚生労働省令第36号)に従って実施されている必要があります。

4. 申請から承認までの流れ

4-1. 全体の流れ

承認申請の標準的な流れは次のとおりです。

STEP内容
① 事前相談(任意・推奨)PMDAの対面助言などで、評価項目や資料の要否を事前に確認
② 申請書・STED・添付資料の作成社内での資料作成。ここの完成度が審査期間を左右する
③ PMDAへ申請提出方法はオンライン(申請電子データシステム)・郵送・窓口持参
④ 審査+信頼性調査+QMS適合性調査3つが並行して進む(詳細は次項)
⑤ 照会事項への対応PMDAからの質問に回答書で対応。複数回あるのが通常で、実質的な山場
⑥ 専門協議・部会(新医療機器など)外部専門家の協議。既存品や臨床試験がない場合には、専門協議が実施されないことが多い。新医療機器は、専門協議後、薬事審議会の部会にかかる。
⑦ 審査結果通知 → 厚生労働大臣の承認承認書の交付
申請から承認までの7ステップ:事前相談→申請書・STED・添付資料の作成→PMDAへ申請→審査(信頼性調査・QMS適合性調査が並行)→照会事項への対応→専門協議・部会→審査結果通知・厚生労働大臣の承認

4-2. 審査と並行して行われる2つの調査

承認審査では、書類の審査と並行して、次の2つの調査が行われます。

【信頼性調査】

申請資料が、法令で定められた基準(医療機器GLP省令・医療機器GCP省令・施行規則第114条の22の信頼性基準)に従って収集・作成されたかを、PMDAが書面または実地で調査するものです(薬機法第23条の2の5第3項・第5項)。

実務上の重要ポイント:審査が始まると、審査担当者から対象となる試験の連絡が来るので、それに従って資料の準備等を行います。

【QMS適合性調査】

製品の製造管理・品質管理の方法がQMS省令(平成16年厚生労働省令第169号)に適合しているかの調査です(薬機法第23条の2の5第6項)。承認時だけでなく、承認取得後も定期的(5年ごと)に受ける必要があります。調査に適合すると「基準適合証」が交付されます。

実務上の重要ポイント:QMS適合性調査は、承認申請とは別に「調査申請」を出さないと始まりません。
申請を忘れると承認のタイミングに直結するので、承認申請後は速やかに調査申請を行ってください
なお、QMS調査は、他の製品で「基準適合証」を所有しているときには、省略できることがあります。

4-3. 照会事項対応が実質的な山場

審査の過程では、PMDAから「照会事項」と呼ばれる質問・指摘が届きます。

回答の質とスピードが審査期間を大きく左右します。

照会事項対応の実務のコツは、別の記事で詳しく解説する予定です。

5. 審査期間の目安(標準処理期間)

承認審査の標準処理期間は、申請区分ごとに次のように設定されています。

申請区分標準処理期間
後発医療機器4ヶ月
改良医療機器(臨床なし)6ヶ月
改良医療機器(臨床あり)9ヶ月
新医療機器12ヶ月

(出典:PMDA「医療機器の標準処理期間」)

ただしこれはあくまで目安です。照会事項への回答に時間がかかる場合や、信頼性調査・QMS適合性調査への対応状況によって、実際の期間は前後します。

申請区分ごとの標準処理期間:後発医療機器4ヶ月、改良医療機器(臨床なし)6ヶ月、改良医療機器(臨床あり)9ヶ月、新医療機器12ヶ月

6. 承認後に必要なこと(変更管理の入口)

承認はゴールではありません。承認後も、次のような手続きが発生します。

  • 承認事項を変更するとき:一部変更承認申請(一変)または軽微変更届(変更の内容によって使い分け)
  • 5年ごとのQMS適合性調査(更新調査)
  • 市販後の安全管理(不具合報告など)

特に「一変か軽微変更届か」の判断は実務で最も悩むポイントのひとつです。次回以降の記事で詳しく解説します。

よくある質問(FAQ)

QMS適合性調査と信頼性調査は、いつ行われますか?

どちらも承認審査と並行して行われます。信頼性調査は、申請時に提出した資料に対してPMDAが実施するもので、申請者側の追加手続きは基本的にありません(調査対応は必要です)。一方、QMS適合性調査は承認申請とは別に「QMS適合性調査申請」が必要で、調査申請があって初めて調査が始まります。承認申請後、速やかに調査申請を行うのが実務の基本です。

承認と認証は何が違いますか?

承認はPMDAの審査を経て厚生労働大臣が与えるもの、認証は登録認証機関(民間)が認証基準への適合を審査するものです。対象となる品目や手続きの違いは「医療機器の承認・認証・届出の違い」で詳しく解説しています。

承認申請の手数料はどのくらいかかりますか?

申請区分と臨床データの有無によって大きく異なります。PMDAの手数料一覧(令和4年5月20日改定)によると、承認審査の手数料(信頼性調査の適合性確認を含む計)の目安は次のとおりです。

  • 後発医療機器(承認基準あり):約53万〜63万円
  • 改良・後発医療機器(臨床なし・承認基準なし):約188万〜308万円
  • 改良医療機器(臨床あり):約665万〜1,041万円
  • 新医療機器:約1,302万〜1,772万円

金額の幅はクラスⅡ・Ⅲ〜クラスⅣの違いによるものです。このほか、QMS適合性調査の手数料(新規承認時:約37万〜40万円)と基準適合証の発行手数料(約5万円)が別途かかります。金額は改定されることがあるため、申請前に必ずPMDAの最新の手数料一覧で確認し、予算化しておきましょう。

審査を少しでも早く進めるコツはありますか?

一番のコツは、申請前の準備で照会事項を減らすことです。具体的には、①事前相談で評価項目の認識をPMDAと揃えておく、②既存品との差分を明確に整理した資料を作る、③信頼性調査・QMS適合性調査の準備を申請前から進めておく、の3つが効きます。

まとめ:承認申請は「区分の見立て」から始まる

医療機器の承認申請の全体像を整理しました。

  • 承認申請の最初の分かれ道は「申請区分」(新・改良・後発)。区分で資料も期間も変わる
  • 必要資料の中心は、承認申請書+STED+基本要件基準チェックリスト
  • 審査は「書類審査+信頼性調査+QMS適合性調査」が並行して進む。QMS調査の申請忘れに注意
  • 標準処理期間は後発4ヶ月〜新医療機器12ヶ月。照会対応の質とスピードが実際の期間を左右する

承認申請は準備がすべてです。この記事が、はじめて担当する方の全体地図になれば幸いです。

本記事の根拠(出典)

本記事は、次の法令・通知等に基づいて作成しています。

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この記事を書いた人

国内製薬メーカーで研究職として勤務した後、国内医療機器メーカーに転職し、10年以上にわたって医療機器の薬事業務を担当。
クラスIIから高度管理医療機器(クラスIII・IV)まで幅広い製品の承認申請等を経験。現在は、薬事コンサルタントとして活動。
本サイトでは、現場で培った実務経験をもとに、新人〜中堅の薬事担当者向けに発信しています。

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