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プログラム医療機器(SaMD)とは?薬機法の対象になる条件をゼロから解説

プログラム医療機器(SaMD)とは?薬機法の対象になる条件。該当性の判断をゼロから解説

スマートフォンのアプリやPCのソフトウェアが、「医療機器」として国の規制対象になる——。

そう聞くと意外に感じるかもしれません。

薬機法の改正(2014年11月施行)により、ソフトウェア単体でも医療機器(プログラム医療機器/SaMD)として扱われるようになりました。

薬事上で注意が必要なのは、医療機器に該当するかの線引きが分かりにくいことです。

健康管理アプリは対象外となるものが多いですが、よく似た機能でも「診断を補助する」と判断されれば規制対象になります。

判断を誤れば、知らないうちに無許可で医療機器を販売した(薬機法違反)という事態にもなりかねません。

この記事では、自社のソフトウェアが薬機法の対象になるかどうかを、厚生労働省のガイドライン等をもとに、ゼロから整理します。

目次

1. プログラム医療機器(SaMD)とは

従来はハードウェア組み込みのみだったソフトウェアが、薬機法改正(2014年11月施行)によりソフトウェア単体でも医療機器になることを示す図と、代表的なプログラム医療機器3例

1-1. 単体のソフトウェアが「医療機器」になる

プログラム医療機器とは、その名のとおりプログラム(ソフトウェア)単体で医療機器に該当するものを指します。

英語の「Software as a Medical Device」の頭文字をとって SaMDとも呼ばれます。

ここでのポイントは「単体で」という部分です。

CTやMRIのように、ハードウェアに組み込まれて動くソフトウェアは、従来から医療機器の一部として規制されてきました。

SaMDは、スマートフォン、PC、クラウド環境などで動作する、独立したソフトウェアです。

1-2. 薬機法改正(2014年11月施行)で何が変わったか

改正前は、ソフトウェアは「物(ハードウェア)」に組み込まれて初めて医療機器として規制される、という考え方でした。

2013年(平成25年)11月に公布された改正薬機法(2014年11月25日施行)により、プログラム単独でも医療機器の範囲に含まれることが法律上明確化されました(薬機法第2条第4項)。

これによって、アプリやクラウド型ソフトウェアといった形態の製品が、正面から薬事規制の対象として位置づけられています。

1-3. 具体的にはどんなものがあるか

プログラム医療機器の代表的なイメージは次のとおりです。

プログラム医療機器の具体例
  • 診断支援プログラム:医療画像を解析し、病変の疑いがある箇所を医師に提示するAIソフトなど
  • 治療用アプリ(DTx/デジタルセラピューティクス):医師の処方のもとで患者が使い、疾患の治療を行うアプリ
  • 治療計画プログラム:治療や手術の計画立案・シミュレーションを行い、医師による治療方法の決定を支援するもの

2. 薬機法の対象になるかは「使用目的」と「リスクの程度」で判断される

自社のプログラムが医療機器に該当するかは、厚生労働省のガイドラインで、「製造販売業者等による当該製品の表示、説明資料、広告等に基づき、当該プログラムの使用目的及びリスクの程度が医療機器の定義に該当するかにより判断される」と示されています(出典:「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」3 該当性の基本的考え方)。

この考え方は、次の2つのステップに分けると理解しやすくなります。

2-1. ステップ①:「使用目的」が疾病の診断・治療・予防に当たるか

まず確認するのは「使用目的」です。

薬機法第2条第4項では、医療機器は「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること」などが目的とされている機械器具等(プログラムを含む)と定義されています。

自社のプログラムについて、表示・説明資料・広告など(口頭の説明も含む)で、診断・治療・予防に当たる使用目的を示しているか(明示・暗示を含む)が、判断の入り口になります。

ガイドラインの別紙1(フローチャート)では、該当し得る使用目的として、次のような例が示されています。

プログラム医療機器に該当し得る使用目的
  • 疾病の診断(スクリーニング、疾病の兆候の検出・早期発見、重症度判定 など)
  • 疾病の治療(治療計画の提案、行動変容療法 など)
  • 疾病の予防

2-2. ステップ②:リスクがほとんどないもの(クラスⅠ相当)は対象から除かれる

使用目的が当てはまる場合でも、不具合(誤作動・誤表示など)が生じたときに人の生命・健康に影響を与えるおそれがほとんどないもの(一般医療機器=クラスⅠに相当するもの)は、医療機器の範囲から除かれます(出典:薬機法施行令 別表第一、同ガイドライン3)。

これは、有体物の医療機器とは異なる、プログラム特有の考え方です。

誤った結果が見過ごされて重大な健康被害につながり得るものは、リスクの程度が高いと評価されます。

この「リスクの程度」は、後述するクラス分類にも直結します。

2-3. リスクの程度の評価が難しいときの「2つの考慮点」

リスクの程度は、原則として後述するクラス分類のルール(GHTFのクラス分類ルール)に当てはめて判定します。

それでも判断しがたい場合には、次の2点を考慮するとされています(出典:同ガイドライン6 人の生命及び健康に影響を与えるリスクの程度の考え方)。

プログラム医療機器に該当し得る使用目的
  • プログラムで得られた結果の重要性からみて、疾病の診断・治療等にどの程度寄与するか
  • 不具合が生じた場合に、人の生命・健康へ影響を与えるおそれを含めた総合的なリスクがどの程度あるか

2-4. 判断のよりどころ:厚労省ガイドライン

これらの考え方は、厚生労働省「プログラムの医療機器該当性に関するガイドライン」(令和3年3月31日制定、令和5年3月31日一部改正)に示されています。大もとは「プログラムの医療機器への該当性に関する基本的な考え方について」(平成26年11月14日付け 薬食監麻発1114第5号)で、グレーゾーンに当たる事例も具体的に示されています。

判断に迷ったときは、まずこのガイドラインを確認するのが出発点です。

また、同ガイドラインの巻末には、質問に順番に答えていくと該当性を判定できるフローチャート(別紙1・別紙2)が用意されています。実務では、①使用目的・処理方法の整理 → ②既存の一般的名称の検索 → ③フローチャートで判定、という手順が示されています(出典:同ガイドライン5 該当性判断の手順)。

さらに、厚生労働省は「プログラムの医療機器該当性判断事例」(令和5年3月31日)や「医療機器プログラム事例データベース」も公表しており、自社製品に近い事例を探すことができます(出典:厚労省「医療機器プログラムについて」)。

該当性判断の2つのステップ:ステップ①使用目的(疾病の診断・治療・予防に使用される目的か)、ステップ②リスクの程度(おそれがほとんどないクラスⅠ相当は対象外)

3. プログラム医療機器に該当する例・該当しない例

ここまでの考え方だけではイメージがつかみにくいため、典型的な例で整理します。

3-1. 医療機器に該当しやすいプログラムの例

  • 医療画像から病変候補を検出し、医師の診断を支援するもの
  • 検査データを解析し、治療方針の判断に用いる指標を算出するもの
  • 医師の管理下で疾患を治療する治療用アプリ(DTx)

3-2. 該当しないことが多いプログラムの例

  • 歩数・体重・睡眠などを記録するだけの一般的な健康管理・フィットネスアプリ
  • 医療情報を一般向けに表示・提供するだけのもの
  • 院内のデータを保管・転送するだけで、診断や治療の判断に踏み込まないもの

3-3. グレーゾーンになりやすいパターン

「健康管理アプリ」と「医療機器」の境界は、判断が難しいものも多いです。

同じ“血圧を記録するアプリ”でも、記録だけなら非該当でも、測定値から異常を判定し受診を促す機能が加わると、該当性の検討が必要になります。

機能を追加・変更するタイミングは、特に注意が必要です。

3-4. 健康管理アプリとSaMDの違い

同じ「健康管理アプリ」でも、搭載する機能によって医療機器への該当性は変わります。次の例で見てみましょう。

機能医療機器該当性
歩数を表示×
体重を記録×
血圧をグラフ表示×
高血圧の疑いを判定
心房細動の可能性を検出
肺がん候補を検出

〇=医療機器に該当/△=使用目的により要検討/×=非該当(いずれも目安)

健康管理アプリとSaMDの境界:非該当(歩数表示・体重記録・血圧グラフ)、要検討(高血圧の疑い判定)、該当(心房細動の検出・肺がん候補の検出)

4. プログラム医療機器に該当した場合のクラス分類と手続き

医療機器に該当すると判断されたら、次はリスクに応じたクラス分類に進みます。

プログラム医療機器も、一般の医療機器と同じくクラスⅠ〜Ⅳに分類されます。

ただし注意したいのは、上述したとおりクラスⅠ相当のものは、そもそも医療機器の範囲から除かれる点です。

そのため、プログラム医療機器は実質的にクラスⅡ以上が規制の対象になります。

4-1. クラス分類とリスクの程度の考え方

クラス分類は、プログラムも一般の医療機器と同じく、GHTFのクラス分類ルールに基づいて判定します。

プログラム医療機器については、原則として「能動型機器」のクラス分類ルールを適用します(出典:「高度管理医療機器、管理医療機器及び一般医療機器に係るクラス分類ルールの改正について」平成25年5月10日付け 薬食発0510第8号)。

クラス区分主な手続き
クラスⅠ相当一般医療機器に相当医療機器の範囲から除外(規制対象外)
クラスⅡ管理医療機器認証基準のある「指定管理医療機器」は登録認証機関の第三者認証、それ以外は承認
クラスⅢ・Ⅳ高度管理医療機器厚生労働大臣の承認(PMDA審査)※認証基準のある一部のクラスⅢは第三者認証

クラス分類について詳しくは「医療機器のクラス分類完全ガイド」をご覧ください。

手続きの違いについては「医療機器の承認・認証・届出の違い」で解説しています。

該当した場合のクラス分類:クラスⅠ相当は規制対象外、クラスⅡは第三者認証か承認、クラスⅢ・Ⅳは厚生労働大臣の承認(PMDA審査)

5. 該当性に迷ったときの相談先

ガイドラインを読んでも判断が難しい場合は、自己判断で進めず、公的な相談窓口を活用しましょう。

5-1. 主な相談窓口

  • プログラム単体の該当性の相談:厚生労働省の監視指導・麻薬対策課が一元的に対応しています。申込みは、PMDAの「医療機器プログラム総合相談」(SaMD一元的相談窓口)の「医療機器該当性に関する相談」から行います
  • ハードウェアと一体の製品としてのみ流通する場合の該当性:主たる事業所がある都道府県の薬務主管課に確認します
  • 医療機器に該当しないプログラムの広告に関する相談:都道府県の窓口へ

(出典:厚生労働省「医療機器プログラムについて」(医療機器プログラム相談窓口について)/PMDA「プログラム医療機器の薬事開発・承認申請に関する手引き」)

5-2. 相談前に整理しておくこと

相談をスムーズにするため、事前に次を整理しておくと効果的です。

  • 製品が「何をするものか」(入力・処理・出力)
  • 使用目的として、医療上の判断にどこまで踏み込むか(前述のステップ①)
  • 不具合が起きたときに想定される影響(前述のステップ②)
該当性に迷ったときの相談先:プログラム単体はPMDAの医療機器プログラム総合相談から申込み(厚労省の監視指導・麻薬対策課が一元対応)、ハードと一体の製品は都道府県の薬務主管課

よくある質問(FAQ)

院内で自作したプログラムも薬機法の対象になりますか?

院内でのみ利用されるプログラムは、一般に薬機法上の流通規制の対象にならない場合があります。外部提供する場合は該当性の判断が必要です。個別ケースは相談窓口で確認することをおすすめします。

AIを使った診断支援ソフトは何クラスになりますか?

AIを使っているかどうかで、クラスが決まるわけではありません。

診断結果の重要性(寄与度)と、不具合が生じたときのリスクをもとにクラスが判定されます。医師の最終判断を支援する位置づけか、判断を代替する位置づけかなどでも評価が変わります。なお、クラスⅠ相当(影響がほとんどないもの)は、そもそも医療機器の対象外です。

まとめ:該当性は「使用目的」と「リスクの程度」で決まる

プログラム医療機器(SaMD)が薬機法の対象になるかは、製品の「使用目的」と「リスクの程度」が医療機器の定義に当たるかで判断します。

  • 健康管理アプリ=必ず対象外、とは限らない
  • 機能の追加・変更で該当性が変わることがある
  • 迷ったらガイドラインを確認し、それでも不明なら相談窓口へ

線引きを正しく理解しておくことが、薬機法違反を避け、製品をスムーズに世に出す第一歩です。

本記事の根拠(出典)

本記事は、次の法令・通知・ガイドラインに基づいて作成しています。

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この記事を書いた人

国内製薬メーカーで研究職として勤務した後、国内医療機器メーカーに転職し、10年以上にわたって医療機器の薬事業務を担当。
クラスIIから高度管理医療機器(クラスIII・IV)まで幅広い製品の承認申請等を経験。現在は、薬事コンサルタントとして活動。
本サイトでは、現場で培った実務経験をもとに、新人〜中堅の薬事担当者向けに発信しています。

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