「この製品の開発には、臨床試験は必要だろうか」
「そもそもどの申請区分になるのか自信がない」
開発の途中でこうした疑問が出たとき、頼りになるのがPMDAの相談制度です。
この記事では、無料の全般相談から、手続きを短時間で確認できる簡易相談、正式な見解がもらえる対面助言(治験相談等)まで、医療機器の相談メニューの使い分けと実務の流れを解説します。
1. PMDAの相談制度の全体像:4つの相談窓口
PMDAの相談には、大きく以下の相談があります。
| 相談 | 位置づけ | 料金 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 全般相談 | 制度・通知の紹介、相談区分の案内など、個別品目に踏み込まない一般的な相談 | 無料 | 記録なし |
| 簡易相談 | 軽微変更・一変の該当性など「手続きの確認」 | 有料 | — |
| 対面助言準備面談 | 対面助言に向けた論点・資料の整理 | 有料(終了証で対面助言の手数料から減額) | — |
| 対面助言(治験相談等) | 個別品目について、試験計画や申請要件などにPMDAの正式な見解を示す相談 | 有料(区分により異なる) | 相談記録が作成・交付される |
| 対面助言フォローアップ面談 | 対面助言の助言内容の確認 | 無料 | — |
使い方の定石は「まず無料の全般相談で論点を整理し、目的に応じて簡易相談(手続きの確認)または対面助言(開発の正式見解)に進む」という流れです。
なお、明らかに簡易相談で対応してもらえそうな相談については、そのまま簡易相談を申し込むことでも問題なく対応してもらえます。

2. 全般相談の使い方
全般相談が向いている場面・向いていない場面を、実務目線で整理すると次のとおりです。
- 向いている相談:該当性・申請区分の考え方、使うべき相談区分、必要な手続きの確認
- 向いていない相談:個別品目の試験計画の妥当性(→正式な見解は対面助言で)
- 無料・記録なしなので、開発初期の「そもそも論」の整理に最適
- 準備面談のような位置づけで、対面助言の資料確認等で行われることも多い
対面またはオンラインでの面会が可能です。
簡単な通知の案内などであれば、電話で回答をもらうこともできます。
悩んだら、「まずは全般相談!」がおすすめです。
3. 簡易相談:軽微変更・一変などの「手続き確認」に
「この変更は軽微変更でいける? 一変が必要?」
そうした手続きの該当性を短時間で確認できるのが簡易相談です(1相談30分以内・有料)。
PMDAのページでは、対象として次のような事項が挙げられています。
- 新規申請・一部変更申請・軽微変更届・届出不要の該当性に関するもの
- 1品目として承認がとれる範囲、申請書の記載整備に関するもの
- QMS・GCP/GLP/GPSPなど調査手続きに関するもの
- 変更計画確認手続制度(IDATEN)に基づく軽微変更の事前確認
「通知の内容には合致しないけれど、軽微変更でいけるのでは?」と思うときに、使うのが有用です。
ここで完結する相談も多く、対面助言よりずっと手軽に使えます。
なお、軽微変更と一部変更承認申請の考え方そのものは「医療機器の承認申請 完全ガイド」の変更管理の章で解説しています(詳しい解説記事も準備中です)。
4. 対面助言(治験相談等)の種類と選び方
対面助言(治験相談等)には、開発段階と目的に応じて次のような相談区分が用意されています(名称はPMDAの相談区分一覧より)。
| 相談区分 | こんなときに使う |
|---|---|
| 医療機器開発前相談 | 開発前・開発初期の疑問に機構の見解を問う(先駆的医療機器・条件付き承認・IDATEN等の要件該当性も) |
| 医療機器臨床試験要否相談 | 新たな臨床試験の実施が必要かどうか |
| 医療機器臨床評価報告書相談 | 臨床評価報告書のまとめ方・妥当性 |
| 医療機器プロトコル相談 | 試験計画の妥当性(安全性・品質・性能・探索的治験・治験などの区分あり) |
| 医療機器評価相談 | 実施した試験結果の評価(安全性・品質・性能・探索的治験・治験・使用成績評価など) |
| 医療機器生物学的安全性評価総合相談 | 生物学的安全性試験の結果・化学分析データの評価 |
| 医療機器事前評価相談 | 申請予定資料の事前評価(品質・非臨床・臨床・信頼性・QMS) |
| 医療機器申請資料確定相談 | 申請資料としての充足性の確認 |
| 医療機器資料充足性・申請区分相談 | 資料の形式的な充足性と申請区分(後発該当性)の妥当性 |
| 医療機器通知等該当性相談 | リバランス通知など通知への該当性 |
| 医療機器IDATEN届出前相談 | 変更計画確認手続制度(IDATEN)に基づく変更の届出対応の可否 |
| 医療機器添付文書改訂相談 | 市販後データに基づく添付文書改訂の評価 |
| 医療機器拡大治験開始前相談 | 拡大治験のために主たる治験から変更する内容 |
| 医療機器追加相談 | 同じ相談区分での再相談 |
プログラム医療機器(SaMD)には、2026年3月31日に全面新設された専用の区分(プログラム医療機器薬事開発総合対面助言、申請前相談、二段階承認に対応したプロトコル相談・評価相談、申請区分・通知等該当性相談など)と、検査システム用の区分が別途用意されています(→プログラム医療機器(SaMD)とは?)。
このほか、先駆け総合評価相談や、信頼性保証関連(信頼性基準適合性、GCP/GLP/GPSP、レジストリ活用など)・品質管理関連の相談区分もあります。各区分の相談例・必要資料・手数料は、PMDAの相談区分一覧で確認できます。
どの相談が適切かを迷う場合には、相談したい内容を全般相談で提示すると、適切な相談区分を案内してくれることが多いです。
5. 準備面談から対面助言へ:申込みから相談記録受領までの流れ
対面助言の前段階として、対面助言準備面談(有料・30分以内・様式第9号で申込み)で論点と資料を整理できます。
毎週水曜正午締切→翌週水曜に実施案内、というサイクルで受け付けられており、準備面談終了証があると対面助言の手数料から準備面談分が減額されます。
対面助言本体の申込みから相談記録の受領までは、おおむね次の流れで進みます。
所定様式をメールで提出します。
案内受領後、期限内に対応します。
提出期限は案内に記載。事前見解を希望する場合は前倒しになります。
対面またはオンラインで実施されます。
6. 相談を成功に導く「6つの準備のコツ」
相談の質は、当日ではなく準備で決まります。申込み前から相談後まで、時系列で6つのコツにまとめました。
① 開発スケジュールから逆算して、早めに動く
日程はすぐには取れません。PMDAに相談資料を確認してもらってから、1カ月半〜2か月後に実施となることが多いため、開発スケジュールから逆算して早めに動くことが大切です。
② 各論点に「自社の考え+その根拠」をセットで示す
「どうしたらいいですか」という丸投げの質問には、一般論しか返ってきません。「自社は◯◯と考える。理由は△△。この方針で問題ないか」という形にすると、具体的な助言が得られます。
③ 先行品・類似品の資料で、過去の論点を予習する
先行品・類似品の承認書や審査報告書を読み、PMDAが過去にどこを論点にしたかを踏まえた資料にすると、当日の議論が速く深くなります。
④ 相談資料はPMDAに事前に確認してもらい、論点を整理しておく
相談資料の充実度は、相談の質に直結します。製品の内容や相談者の懸念点を理解してもらえるよう、相談資料案は何度も確認してもらうことをお勧めします。資料が不十分な場合には、「審査時までに適切に対応すること」などの助言にとどまり、適否を判断してもらえなくなります。
なお、相談資料案の確認は、準備面談か全般相談で対応してもらえます。まずは全般相談で申し込み、PMDAから準備面談で進めるように言われたら、準備面談に進む方が安全です。
⑤ 資料提出後の「事前照会」には、しっかりと回答する
相談資料の内容が不十分な場合には、2〜5日程度での回答を求められます。照会が出されるスケジュールも事前に確認しておきましょう。
⑥ 相談結果の「分岐」を社内で事前に合意しておく
社内の意思決定者と「相談結果がAならこう進める、Bならこう」の分岐を事前に合意しておくと、当日の議論で、今後の進め方を相談しやすくなります。
よくある質問(FAQ)
まとめ:無料の全般相談から始めるのが定石
この記事の要点は、次の3つです。
- 進み方の定石は「全般相談(無料)で入口を整理 → 手続きの確認は簡易相談、開発の正式見解は準備面談→対面助言」の使い分け
- 相談資料の充実度が相談の質に直結。資料案は全般相談・準備面談で何度も確認してもらう(不十分だと適否を判断してもらえないことも)
- 日程は資料確認から実施まで1カ月半〜2か月。開発スケジュールから逆算して早めに動く
承認申請の全体像(申請区分・審査の流れ・標準処理期間)は「医療機器の承認申請 完全ガイド」で、プログラム医療機器の相談体制は「プログラム医療機器(SaMD)とは?」で解説しています。
本記事の根拠(出典)
本記事は、次のPMDA公式情報等に基づいて作成しています。
- PMDA「相談業務」(制度全体の案内)
- PMDA「対面助言のうち治験相談等」(申込みの流れ・様式)
- PMDA「対面助言のうち簡易相談」(対象事項・実施予定)
- PMDA「対面助言のうち対面助言準備面談」
- PMDA「全般相談、同時申請相談、対面助言フォローアップ面談」
- PMDA「医療機器の治験相談等」(相談区分の一覧・手数料)
- PMDA「プログラム医療機器の薬事開発・承認申請に関する手引き」

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