一部変更承認申請と軽微変更届の違い|判断基準を現役実務者が実例で解説

一変と軽微変更届 変更手続きの判断基準 判断の考え方を実例で解説(Yakujilab)

「原材料の調達先が変わる」
「滅菌製造所を追加したい」
「ソフトウェアに機能を追加したい」
——承認取得後の製品には、必ず変更がやってきます。

その際に検討が必要なのが、一部変更承認申請(一変)か、軽微変更届か、それとも手続不要か、という判断です。
この判断を誤ると、最悪の場合「承認事項と異なる製品を販売していた」という重大な事態になります。
この記事では、実務の拠り所である2つの通知をベースに必要な手続きの確認方法を整理し、迷ったときのPMDA簡易相談の使い方まで解説します。

目次

1. 変更管理の全体像:出口は3つ

変更に必要な手続きは、次の3つのどれかに落ちます。まず全体像を押さえてください。

出口どんな変更か手続き
手続不要(社内の変更管理のみ)承認事項に影響しない変更。通知①別紙2の範囲(有効性・安全性と直接関連せず、製品の同一性を損なわないもの)行政手続きなし。ただし社内で影響を検証・評価し、記録を残す
軽微変更届承認事項の変更のうち「軽微な変更」(施行規則114条の25)に当たるもの変更後30日以内に届出(様式第63の10)
一部変更承認申請(一変)品質・有効性・安全性に影響を与えるおそれのある変更変更前に承認が必要(承認されるまで変更できない)

実務の落とし穴は「軽微変更届に見えて、実は一変が必要」というパターンです。
だからこそ、通知の事例集(第3章・第4章)と、迷ったときの簡易相談(第5章)が重要になります。

変更手続きの確認マップ:変わるのは承認書の記載事項か?記載がなければ手続不要(社内で検証・記録)。記載があれば品質・有効性・安全性への影響を2つの通知の事例集と突合し、明らかに軽微なら軽微変更届(変更後30日以内。事前確認の範囲は簡易相談で確認を受けてから届出)、影響がある・十分に推定できない場合は一部変更承認申請(変更前に承認が必要)。迷ったら申請・届出の前にPMDAの簡易相談へ

2. 法律上の整理

承認事項の一部を変更しようとするときは、原則として厚生労働大臣の承認(一部変更承認)を受けなければなりません(医薬品医療機器等法23条の2の5第13項)。

例外として「厚生労働省令で定める軽微な変更」に当たる場合は、変更後30日以内の届出でよいとされています(同条第14項、施行規則114条の26)。

では「軽微な変更」とは何か。施行規則114条の25は、軽微な変更を「次の変更以外のもの」と定義しています。

  • 使用目的又は効果の追加、変更又は削除
  • 病原因子の不活化又は除去方法に関する変更
  • このほか、製品の品質、有効性及び安全性に影響を与えるもののうち、厚生労働大臣が一部変更承認を受けなければならないと認めるもの

つまり条文上、軽微な変更は「重要な変更を除いた残り」としてしか定義されていません。

そして、3つ目の「厚生労働大臣が承認を受けなければならないと認めるもの」の中身を具体化しているのが、次章で見る通知です。

なお、認証品目(登録認証機関の認証を受けた品目)の場合は、一部変更認証申請・軽微変更届の提出先が登録認証機関になります。この記事は承認品目を前提に解説します。

3. 実務の拠り所は「2つの通知」

「この変更はどっちに落ちるのか」を実務で判断するとき、拠り所になるのが次の2つの通知です。

どちらも現役で、役割が異なります。

※通知本文の条文・項番号は発出当時のものです。現在の条文では、一変=法23条の2の5第13項、軽微変更届=同条第14項に当たります。

通知①「医療機器の一部変更に伴う手続について」(平成20年10月23日付け薬食機発第1023001号)

一変・軽微の判断の基本となる通知で、2つの事例集が付いています。

構成内容
別紙1軽微変更届でよい変更の事例集。
承認書の欄ごと(名称、形状・構造、原材料、製造方法、製造所など8つ)に事例が整理されている
別紙2一変も軽微変更届も不要な変更の事例集。
変更が有効性・安全性と直接の関連を持たず、製品の同一性を損なわないときに限る

▶ 原文:「医療機器の一部変更に伴う手続について」(薬食機発第1023001号・PDF)

「手続不要」の範囲を正面から示した通知はこれだけです。

変更管理のSOPや判断基準を社内で作るときの必須資料になります。

なお、あわせてこの通知は、何らかの変更を行う場合には、その影響を適切に検証・評価して記録を残し、QMS適合性調査等の際に説明できるようにしておくことも求めています。

通知②「医療機器の一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」(平成29年7月31日付け薬生機審発0731第5号)

通知①などの取扱いを明確化するために出された通知で、内容は大きく3つです。

構成内容
記1(本文)一変申請が必要な変更の3つの考え方:
①既存リスクを増大させる・新たなリスクを生じさせる変更で、影響が明らかに軽微とは言えないもの 
②影響が十分に推定できないもの 
③製品の同一性が損なわれないことが明らかでない形状・構造の変更
別紙1軽微変更届の事例の追加(透析器の膜面積の変更、呼吸回路の回路長の変更など)。
通知①の別紙1の事例も引き続き有効と明記
別紙2「事前確認」の範囲。軽微変更届となる可能性が高いものの、一変が必要な例外もあり得る変更(通信規格の変更、換気モードの追加など)。
PMDAの簡易相談で事前に確認を受けた上で届け出るべきものとされている(第5章)

▶ 原文:「医療機器の一部変更に伴う軽微変更手続き等の取扱いについて」(薬生機審発0731第5号・PDF)

2つの通知の関係をまとめると、通知①が土台(軽微の事例+手続不要の範囲)、通知②が上乗せ(一変の考え方+軽微事例の追加+事前確認の仕組み)です。

新しい通知が古い通知を置き換えたわけではなく、セットで読む必要があります。

4. ケーススタディ:通知の実例で必要な手続きを確認する

通知の事例集から代表的なものを抜き出して、3つの出口に並べてみます。

判断の「相場観」をつかんでください。

※いずれも通知の例示の要約であり、実際にはただし書き(適用条件)が付くものがほとんどです。
同じ変更でも品目や変更の程度によって扱いが変わることは通知自身が明記しているので、実際の判断では必ず原文の該当箇所を確認してください。

通知の実例でみる変更の具体例:手続不要(医用電気機器のケーシングの色・塗装の変更、仕様・性能に影響しないソフトウェア変更)/軽微変更届(内視鏡のシャフト径のサイズ追加、法人統廃合に伴う販売名変更、呼吸回路セットの回路長変更)/事前確認=簡易相談で確認を受けてから届出(通信規格の追加・変更、人工呼吸器への換気モード追加)/一変申請(使用目的・効果の追加変更削除、影響が十分に推定できない変更)
変更の例必要な手続き出典
医用電気機器のケーシングやキャビネットの色・塗装の変更手続不要通知①別紙2
承認(認証)範囲内で、仕様・性能等に影響を与えないソフトウェアの変更手続不要通知①別紙2
内視鏡のシャフト径・長さの、承認(認証)範囲内でのサイズ追加軽微変更届通知①別紙1
法人の統廃合に伴う販売名の変更軽微変更届通知①別紙1
呼吸回路セットの回路長(蛇管の長さ)の変更(性能・安全性の規格は承認範囲内)軽微変更届通知②別紙1
有線・無線通信規格の追加・変更・削除(Bluetooth規格のバージョンアップ等)事前確認(簡易相談で確認の上、軽微変更届)通知②別紙2
成人用人工呼吸器への、自社既承認前例のある補助的な換気モードの追加事前確認(同上)通知②別紙2
使用目的・効果の追加、変更又は削除一変申請(そもそも軽微の範囲から除外)施行規則114条の25
品質・有効性・安全性への影響が十分に推定できない変更一変申請通知②記1

こうして並べると、「本体の性能・安全性への距離」で出口が決まっていくのが分かります。

距離が遠い(色、カタログ番号、影響しないソフト変更)ほど手続不要側へ、承認事項の中核(使用目的、性能規格)に近いほど一変側へ、という構図です。

5. 迷ったらPMDAの簡易相談——申請・届出の「前」に確認する

ここまでの整理は、あくまで一般的な考え方と例示です。

個別の品目について通知に合致しない場合には、PMDAの簡易相談で確認するのが安全で確実な進め方です。

STEP
承認書のどの欄が変わるかを特定する

変わるのが承認書のどの欄かを特定し、2つの通知の事例集と突合して当たりをつけます。

STEP
判断理由の資料を作成し、簡易相談を申し込む

判断理由を説明した資料を作成し、簡易相談を申し込みます。

(通知②別紙2(事前確認の範囲)に触れるときは、事前に簡易相談で確認を受けた上で届け出るべきとされています)

簡易相談には目的別の区分があります。一変・軽微の判断で使うのは、主に次の2つです。

  • 手続不要・軽微変更届・一変申請のいずれに該当するかを確認したい → 簡易相談の「医療機器・体外診断用医薬品」区分
  • 通知②別紙2(事前確認の範囲)に該当する変更 → 簡易相談の「医療機器・体外診断用医薬品変更届出事前確認」区分(電子メール又はファクシミリで実施)

いずれも有料の相談です。手数料や申込様式は変わることがあるため、最新の情報はPMDAの簡易相談のページで確認してください。認証品目の場合は、登録認証機関に相談します。

簡易相談を含むPMDA相談制度の全体像と申込みの流れは、「PMDAの相談制度の使い方」で詳しく解説しています。

簡易相談なしで軽微変更届を提出した場合には、その後の一変審査の中で軽微変更届の妥当性を審査員に確認されます。この確認が長引くと、承認時期が遅くなる可能性があるので、簡易相談はできる限り受けておいた方が安心です。

よくある質問(FAQ)

軽微か一変か、どうしても判断がつきません。

まず変わるのが承認書のどの欄かを特定し、2つの通知の事例集と突合してください。その上で、申請・届出の前にPMDAの簡易相談で確認するのが確実です(本文第5章)。

一変の審査期間はどのくらいですか?

品目・変更内容によりますが、後発医療機器の場合の一変では、標準4ヶ月程度の目標値が公表されています(詳しくは「医療機器の承認申請 完全ガイド」の審査期間の章へ)。

承認されるまで変更できないため、切替時期から逆算した申請計画が重要です。

認証品目の場合も同じ考え方ですか?

判断の考え方は似ていますが、手続先が登録認証機関になります。

通知②も、認証品については届出予定の登録認証機関に相談するよう明記しています。

この記事は承認品目を前提としています。

まとめ:判断の型と「迷ったら事前に相談」

この記事の要点は、次の3つです。

  • 原則は一変、軽微変更届は例外(変更後30日以内・様式第63の10)。軽微の範囲は施行規則114条の25で「重要な変更以外」として定義され、具体像は通知の事例集が示している
  • 拠り所は2つの通知。通知①(薬食機発第1023001号)=軽微の事例+手続不要の範囲、通知②(薬生機審発0731第5号)=一変の考え方+軽微事例の追加+事前確認の仕組み。両方現役でセットで読む
  • 個別品目の判断に迷ったら、申請・届出の前にPMDAの簡易相談で確認する。軽微・手続不要と判断したときこそ、判断記録を残す

承認申請の全体像は「医療機器の承認申請 完全ガイド」、簡易相談を含む相談制度の全体像は「PMDAの相談制度の使い方」、SaMDの規制は「プログラム医療機器(SaMD)とは?」で解説しています。

※本記事の整理は一般的な例示です。個別の品目についての判断は、必ず通知の原文をご確認の上、必要に応じてPMDA・登録認証機関にご相談ください。

本記事の根拠(出典)

本記事は、次の法令・通知等に基づいて作成しています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

国内製薬メーカーで研究職として勤務した後、国内医療機器メーカーに転職し、10年以上にわたって医療機器の薬事業務を担当。
クラスIIから高度管理医療機器(クラスIII・IV)まで幅広い製品の承認申請等を経験。現在は、薬事コンサルタントとして活動。
本サイトでは、現場で培った実務経験をもとに、新人〜中堅の薬事担当者向けに発信しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次